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オーストラリアに亡命した中国人スパイ、中国が映像公開

11月23日、1人の中国人男性がオーストラリア政府に政治亡命を求めていたことが世界各国のメディアで報じられました。この男性の名前は“王力強(Wang Liqiang)”と言い、中国のスパイとして香港、台湾、オーストラリアなどの地域でスパイ活動に従事していたことを供述しています。これが事実だとすれば、中国版スノーデン事件ということになります。
 
王力強は家族と共にオーストラリアに観光ビザで入国し、その後オーストラリア当局に政治亡命を申請しました。これだけでも非常に興味深い事件ですが、王力強はスパイとして活動していた際に入手した中国の国家機密などを所持しており、同氏はこの情報の引き渡しをする代わりに、政治亡命を認めてもらおうという考えだと思われます。王氏はすでにオーストラリア当局に対して、主にインターネット上で世論操作を行い、2018年に行われた台湾の統一地方選挙への選挙介入を行っていたことを明らかにしています。また、来年1月に行われる台湾の大統領選挙でも、中国にとって有利になる工作活動を担当していたことを明かしています。王氏によると、来年の台湾大統領選で中国政府にとって有利な結果とするため、中国当局は現地メディア関係者や現地大学の学長などに金銭支援を行い、選挙に影響を与えようとしていたことなどを話しています。
 
こうした王氏の亡命事件について、中国外交部は今月25日、記者会見を開きこうした王氏の発言は全くのデタラメと真っ向から否定しました。。警察当局も、王氏について過去に詐欺事件の容疑者となっているただの犯罪者であると発表しています。中国当局は王氏が偽造されたパスポートで台湾や香港に滞在していたとしています。
 
こうした中、中国国営メディアは王氏がスパイなどではなく、ただの犯罪者であることを強調するため2016年に福建省の裁判所で行われた王氏の裁判時の様子を撮影した映像を公開しました。

《中国国営メディアが報じた王氏の裁判映像》
 
詐欺事件の犯人として、裁判の法廷に立つ王氏に裁判官は懲役6ヶ月、罰金1万元の罰金を言い渡しました。しかし、2016年に刑事事件で逮捕され服役した王氏が、2018年に台湾や香港などに赴いていたということはありえるのでしょうか。
 
今回王氏がオーストラリア当局に提示しているとされる国家機密資料が本物であるとされるならば、王氏は服役のタイミングで中国当局からスパイ活動に従事する工作員としてリクルートされていた可能性が出てきます。中国当局は王氏の所持していたパスポートがご蔵されていたものとしていますが、現在世界各国の空港では、顔認証システムや指紋採取などを行っているほか、パスポートにはICチップが内蔵されるなど、偽造対策が非常に厳しい時代となっているのです。王氏は偽造パスポートを使って複数の国に出入国していたと見られますが、ここまで精巧な偽造パスポートを今の時代に製造するには国家レベルの技術がなければ製造できません。
 
現在、中国は香港問題やウイグル問題、米中貿易摩擦など大きな問題が山積みとなっています。今回の王氏の亡命事件によって、中国はさらに難しい対応に迫られていくことになるでしょう。