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米ウイグル人権法に対抗し、中国がドキュメンタリー番組を放映

今月3日、アメリカ議会は、中国政府が少数民族であるウイグル族の人々を強制収容所などで不当に拘束し、再教育や思想改造の名のもと人権侵害を行っているとして、当局者に制裁を求める「ウイグル人権法案」を可決しました。これに対し、中国は即座に反論。アメリカへの制裁を示唆しました。
 
そんな中、今月5日、中国国営テレビ・CCTVの国際版であるCGTN(シージー ティーエヌ)上で、ウイグル族の危険性を強調する内容のドキュメンタリー番組が放送されました。【中国ウイグル自治区、対テロの最前線】というタイトルで50分間にわたり放送されたこの番組。その内容は、2013年に北京の天安門付近で発生したウイグル族による自動車突入事件や、2014年に雲南省省都昆明市の昆明駅で発生した無差別殺傷事件など、独立派ウイグル族によるテロ事件を紹介するという非常にショッキングな内容でした。
 

ウイグル過激派のテロ行為について報じた番組の一部分の映像》
 
この番組はアメリカ議会の「ウイグル人権法案」可決からわずか2日で放送されましたが、その背景には中国政府が新疆ウイグル自治区で行っているウイグル族への政策を正当化したい狙いがあるものとみられます。
 
実際、中国に住むウイグル族の中には、独立思想を持った過激派が存在し、これまで上記のようなテロ行為によって中国公安当局と衝突を繰り返してきました。しかし今回の番組内では、中国の専門家の「9・11自爆テロで西洋諸国はイスラム過激派をテロ組織と断定し、彼らの撲滅を行ってきた。アメリカはダブルスタンダードで考えている」という話も取り上げており、そこから見ても、番組放送の最大の目的は、米国を批判しつつ中国当局の行為を正当化することにあった、と言えるでしょう。
 
中国政府は「テロ行為を目論む過激派を撲滅するために行っているに過ぎず、アメリカが行っているテロ対策と何ら変わりはない」という論調に持っていくことで、ウイグル族への再教育や思想改造を正当化したい思惑があります。とは言え、一説にはテロ撲滅の名の下に100万人ものウイグル族を収容所に収容しているといわれており、そうなれば国際社会の理解を得ることが難しいことは言うまでもありません。
 
こうした報道の影響もあり、中国国内ではウイグル族への偏見がますます大きくなっています。また、一般のウイグル族からも中国政府に対する不満がピークに達しています。国内外から批判が集まる中国。一党独裁体制にいよいよ黄色信号が灯っているようです。