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シンガポールで新型コロナウイルス鎮圧が成功した理由

新型コロナウイルスの対応を巡り、海外メディアからのみならず日本国内からも非難を浴びている日本政府。中国で新型コロナウイルスの発生が公表された後も中国人観光客の入国を許し、更に独自の検査基準を設けたことで、感染の疑いのある国民が中々検査を受けられないという事態を引き起こしてしまいました。


そうした中、シンガポールは日本と真逆の措置を採ったことにより、国内での感染者拡大を食い止めることに成功しています。


シンガポールでは、1月に新型コロナウイルスの感染者が確認されると、その直後から首相であるリー・シェンロン (李顕龍)氏がテレビに出演し、「新型コロナウイルスの感染が広域に拡大してから濃厚接触者を追跡することは困難であり、一人一人に隔離措置を採れば、病院では病室があっという間に足りなくなってしまう。このため、初期症状が現れたり症状の軽い人はその段階で積極的に医療機関に行くことをお願いしたい」と、国民に呼びかけたのです。

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《首相自らテレビで国民に向け談話を発表した》


その結果、2月24日までの時点でシンガポールの感染者数は89人に抑えられ、退院者数51人、死亡者数0人と感染拡大の食い止めに成功したのです。

 

国内で感染が確認された初期段階で、体調に不安のある国民に医療機関への受診を呼び掛けたシンガポール政府ですが、それ以外にもいくつかの施策を講じました。


シンガポール国内で初めて感染者が確認されてからわずか4日後の1月27日、シンガポール政府は国内の中国人従業員に対し、14日間の強制隔離措置を実施、中国人従業員を雇用していた企業については政府が補助金を支給するという救済策を講じたのです。


その後、2月8日には大規模なイベントの開催を強制的に全て中止すると発表し、2月18日には、新型コロナウイルス発生後に中国に入国経歴のある市民を14日間強制隔離することを決定。


さらに国内に新型コロナウイルス専門の検査所を800箇所以上開設し、検査費用を政府が補助することを約束、受診に行く市民に支援金の支給などの対応を行い、市民に積極的に検査に行くよう呼びかけました。


また今回の新型コロナウイルスの発生当初から中国や日本では多くのデマがネット上で拡散され、社会的な混乱も見られましたが、シンガポールでは、政府高官が積極的にメディアに出演し、新型コロナウイルスに関するデマ情報を直接否定することで、社会的混乱を避けるよう努めてきました。こうした初期段階における努力が功を奏し、新型コロナウイルスの蔓延が抑えられ、死亡者ゼロという結果となったのです。


シンガポール新型コロナウイルスの拡大防止に成功した背景には、“明るい北朝鮮”との異名を持つシンガポール独自の政治体制にあるのではないでしょうか。シンガポールは、経済成長を維持する一方、管理・監視の厳しい人民行動党一党独裁国家です。


一党独裁と言っても、政治家や官僚による汚職・不正の少なさは世界的にもトップクラスであると評価されていますが、その一党独裁という体制により、今回、新型コロナウイルスの防止策を素早くトップダウンで決定・実行することができたのです。日本は法治国家・人権国家であるが故に、新型コロナウイルスに対する対策について、様々なプロセスを踏まえる必要があり、その結果、無駄に時間を費やし感染を拡大させてしまったと言って良いでしょう。


新型コロナウイルスの発生初期段階で、人権侵害という批判を顧みず、様々な強制措置を講じる一方、経済的補償を企業や市民に行ったシンガポールの対応には、学ぶ点が多くあるのかもしれません。