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中国独自の位置情報システムが確立か、軍事転用による米中対立の火種にも

普段私たちが何気なく使用しているグーグルマップや車のルート検索には、主にアメリカの衛星技術が使用されています。我々にとって生活の一部となっているGPS技術の始まりは軍事用の技術だったのです。GPS技術は現在も軍事方面で大きな役割を果たしており、特にミサイル発射の際には、攻撃目標を正確に捉えるためGPS技術が役立っているのです。高度なGPS技術、つまり衛星を多く所有している国家は、それだけ軍事的優位に立つことが出来るのです。


こうした中、中国の宇宙開発を管轄する行政機関・中国国家航天局は本日20日、中国の衛星「高分7号」を正式活用することを発表しました。「高分7号」は昨年11月3日、事実上の国有企業である「中国航天科技集団有限公司」が打ち上げた衛星です。

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航天局によると、「高分7号」は、分解能0.65メートルと世界的にもトップレベルの解析度を誇り、正確な土地の測量などに使用されると発表しています。当局は具体的な使用目的として、土地の管理監督・農地の測量・高速道路建設などを挙げています。

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《衛星打ち上げの様子(新華社より)》


一見すると、平和利用としての側面が強調される今回の衛星ですが、打ち上げを行った「中国航天科技集団有限公司」は、その前身が1956年に設立された中国国防部第五研究所なのです。つまり中国の軍部に由来を持つ企業で、現在では衛星技術の他、ミサイル開発などを行ってきた企業なのです。

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こうした背景を考えれば、当然ながら今回の「高分7号」が軍事開発の一環で打ち上げられたことは明らかで、アメリカにとっても非常に大きな懸念材料となるのです。中国は2000年以降、宇宙開発に多額の国家予算を投入してきました。世界的な大国となるためには、軍事的優位に立つ必要があり、軍事的優位に立つためには宇宙開発が非常に重要なウエイトとなるのです。中国は国家として、独自の位置情報技術を確立することで、アメリカに対し、新たな牽制のカードを手にすることが可能となります。「高分7号」の存在は、今後の米中対立にも大きな影響を与えることになるのではないでしょうか。