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中国で少年法改正へ、きっかけは13歳少年による凶悪殺人

日本では未成年者による凶悪犯罪が起こるたびに、少年法の存在意義が大きな話題となります。少年法を設ける一番の目的は、罪を犯した未成年者には更生の機会を与えることであり、それが最大の存在意義でもあります。とはいえ、凶悪な少年犯罪に巻き込まれた被害者やその遺族の気持ちを考えれば、少年法の存在意義に疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。少年法の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)は、18・19歳の加害者の実名報道や厳罰化を認める法案を提起しており、来年にもその法案が国会の審議を経て、施行されていく見通しとなっています。
 
実は少年犯罪を巡っては、中国でも未成年者の更生・保護を目的に少年法同様の規定が設けられています。中国では“刑事責任年齢”というもので少年の刑罰を規定しているのです。それに基づけば、14歳未満の未成年者による犯罪については、事件の凶悪性に関わらず、犯人の少年には一切の刑事責任を問わないことになっています。また、14歳以上16歳未満の未成年者による殺人・強姦・強盗などの凶悪犯罪については、刑事責任は負わせることになっているものの、減刑など年齢を考慮した対応をとることが求められています。
 
《逮捕された13歳の少年》

《死亡した10歳の女児》

しかし中国でも昨年10月、“刑事責任年齢”の変更を求める声が高まるきっかけとなる事件が発生しました。中国大連市で当時13歳の少年が近所に住む10歳の女児を刺殺する事件が起きたのです。女児の身体には7カ所の刺し傷の他、顔面を殴られた痕もあり、遺体はビニール袋に入れられ遺棄されていました。犯行そのものを見る限り、殺害方法は極めて残忍であり、尚且つ計画的でしたが、検挙された少年が13歳という、“刑事責任年齢”に規定された14歳未満だったため、刑事責任を問われることはありませんでした。その上、裁判で少年の両親に128万元の賠償金を支払う判決が下されたにもかかわらず、賠償金は未だ支払われておらず、少年から女児の遺族に対する明確な謝罪もありません。
 
このため中国の世論も、犯人の少年に全く刑罰が科せられないことや、少年に謝罪の意思が見られないことへの疑念が強くなり、“刑事責任年齢“改正へと傾いていったのです。そうした中、中国で法案の起草や改正を議会に提案する機関・法制工作委員会は本日、記者会見を行い、“刑事責任年齢”の改正について、初めて言及しました。
 
 
 
同委員会はこの記者会見で、「犯罪の低年齢化が顕著となり、社会の大きな関心事となっている。少年犯罪の加害者の矯正も大切だが、被害者の正当な利益を守ることも大切だ。特定の状況下では、個別に“刑事責任年齢”の引き下げも視野に入れている」と語ったのです。つまり、中国でも今後、事件の凶悪性などによっては14歳未満であっても刑事責任を問われる可能性が出てきたと言えるでしょう。世論の声に押される形で、関連法規の改正が現実的となってきた中国。事件の内容によっては、未成年者の死刑囚も出てくるのかもしれません。