周来友ブログ

周来友オフィシャルブログ

北京市地下鉄がAED設置を拒否する訳とは

日本では駅や商業施設、学校などで当たり前のように設置されるようになったAED自動体外式除細動器)。現在では、コンビニや高速道路などでもよく見かけるようになりました。また、AED によって一命を取り留めたというニュースも頻繁に報じられており、AEDの重要性がますます高まっています。
 
こうした中、中国では非常に悔やまれる事件も起こっています。
 
今年9月、中国北京市を走る地下鉄13号線の駅で乗客の45歳の男性が意識を失い倒れるという出来事がありました。男性は心臓発作で、すぐに病院に運ばれましたが、残念ながら死亡が確認されました。
《この出来事では、倒れた男性を救おうと行動したのは周りにいた一般市民だった》
 
実は中国ではAEDに対する認知度は低く、公共施設や交通機関AEDが設置されていることがまだ珍しいのです。今回、乗客の男性が亡くなった北京市の地下鉄でもAEDは設置されていませんでした。実は、北京市の地下鉄では、これまでAEDの設置を頑なに拒んできた経緯があります。
 
地元中国メディアによると、これまで多くの企業や個人、さらには中国赤十字社までもが北京市の地下鉄を運営する“北京市地鉄運営有限公司”に対し、AEDを駅構内に設置してもらおうと寄贈を行ってきましたが、なんと運営会社はこれまで受け取りを拒否してきたのです。
 
さらに昨年発生した事故では、遺族が運営会社を訴えるという出来事も発生しています。2019年3月、北京市の地下鉄に乗っていた29歳の男性が、心臓発作によって駅のホームで倒れました。ところが、駅のスタッフは救急車を呼ぶだけで、男性の救護活動を一切行わなかったことが明らかになったのです。
 
男性はその後死亡が確認されましたが、男性の遺族は、地下鉄職員の対応に問題があったとして、地下鉄の運営会社を相手取り裁判を起こしたのです。この裁判で、運営会社は信じられない言葉で反論したのです。
 
「突然死に対する有効な対応策は世界中探しても存在しない。我々は万が一の二次被害を防止するため、積極的な対応は行わない。我々は医療機関でもない。我々が対応できるのは転んで倒れてしまった人を手助けできるくらいだ。亡くなった男性は倒れた時、すでに意識はなく我々が行える対応の範囲を超えていた。医療関係者でない我々が彼を助けることはできなかった」
 
公的な機関であるはずの地下鉄の運営会社が裁判で語った非人間的な言葉からは、心臓発作や心肺蘇生に対する知識の欠如、そして不特定多数の人々の命を預かる鉄道事業者の発言とは到底信じられない言葉だと感じます。
 
上海や深セン、南京などの都市部を走る地下鉄構内には、すてにAEDの設置が行われ多くの人の命が救われてきました。


 
北京市の地下鉄だけが、命を軽視した運営を行なっていると言わざる得ないのです。AEDの設置を頑なに拒んできた北京市の地下鉄運営会社には今後、政府から厳しい行政指導や処分が下ることになるでしょう。