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中国で抗日戦争ドラマが嘲笑の対象に!?

中国のテレビ番組を観たことのある人であれば、気が付く人も多いと思いますが、中国では四六時中、日中戦争を題材にした抗日戦争ドラマが放送されています。内容はと言うと、中国人民解放軍の前身である八路軍が凶悪凶暴な日本軍と戦い、見事勝利するというお決まりのストーリーとなっています。
 
中国人たちは、日本で例えるなら“水戸黄門”や“遠山の金さん”のような、正義のヒーローが悪党を懲らしめる勧善懲悪ドラマのような感覚で抗日戦争ドラマを観てきたのです。
 
しかし近年、この抗日ドラマに異変が起こっているようです。これまで残酷で冷血な日本軍を描いてきた中国の抗日ドラマ。日本軍の凶悪性を誇張して描いた作品は数しれません。それでも中には優れた作品も多かったのですが、この数年でその演出も、まるでアクション映画のように手刀で日本軍兵士の体を引き裂いたり、手榴弾を投げ飛行中の戦闘機を撃墜したりと、公共放送とは思えない極めて低俗で現実離れしたものとなってきたのです。このため、こうした史実とかけ離れた抗日ドラマは、“抗日神劇”と揶揄されるようになっていました。
 
《ドラマの中で上の写真が八路軍の基地として登場するが、中国メディアは、実際の基地はこうした地下壕であったと報じている》
 
そんな中、今月16日、中国国営メディア・人民日報は、このような抗日ドラマを痛烈に批判する内容の記事を配信しました。記事には、「八路軍の兵士が豪華な別荘暮らしをしていたり、整髪料で髪型を整えたり、と史実ではあり得ない場面が多く見られる。歴史ドラマにおいては、歴史に敬意を払い、歴史と視聴者を尊重する作品作りをしなくてはならない」と記されており、近年の抗日ドラマの行き過ぎた演出に釘をさす内容となっていました。
 
そんな抗日神劇ですが、では一体なぜこのようなドラマが生まれてしまったのでしょうか。
 
水戸黄門が1979年、最高視聴率となる43.7%を記録するなど、日本中が勧善懲悪をテーマとする時代劇に熱狂した時代がありました。しかしその後、水戸黄門は視聴率の低下を理由に2011年、放送を終了します。
 
抗日ドラマにおいても、近年は中国の若者が興味を示さなくなっており、視聴率が低迷していました。そこで、若年層の視聴者を取り込むべく編集に編集を重ねた結果、まるでコメディ・アクション映画のようなトンデモ作品が誕生してしまったのです。
 
中国国内のSNS上では、若い世代のネットユーザーから「バカみたいな抗日ドラマを何年も流して本当に気分が悪い。何を伝えたいのかさっぱりわさっぱり分からない。いつまでも日本を敵国扱いしてどうしたいの?」、「抗日ドラマはお笑い番組のつもりで観ると中々面白くていい」、「こんなドラマの放送を認めていた政府にも問題があるだろ」など、的確な意見が数多く寄せられています。
 
愛国教育を受けてきた中国の若者ですが、歴史認識については比較的客観的な考えを持つ若い世代が増えているように感じます。そんな中、彼らの気を引こうと荒唐無稽な歴史ドラマを制作した結果、逆に若者たちから嘲笑される、という皮肉な結果を招いてしまった訳です。今回の報道が、未来志向の歴史観を持った若者が増えていくきっかけとなれば良いのですが。