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落ち着きを取り戻す米中対立、今年は中印対立が激化か

今月、アメリカではバイデン新政権が誕生しました。国際協調路線を明確にしているバイデン政権となったことで、これまで国際社会が警戒していた米中対立も落ち着きを見せることが予想されています。一方、2021年は中印対立が本格的に深刻な状態となる様相を見せています。
 
国境を巡り、昨年から両国の軍隊は小規模な衝突を繰り返していました。インド政府は中国への対抗措置として、59の中国製アプリの使用禁止を発表し、現在インド国内のアプリ市場から削除されダウンロードが不可能となっているのです。
WechatやTikTokなど、日本でも多くのユーザーを持つこうした中国アプリがインドでは排除されているわけですが、TikTokを運営するバイトダンス社は社内のスタッフ向けに、今後のインド市場における見解を示したメールを送っています。
 
社員向けに送られたメールには、「当初、インドにおけるTikTokアプリの使用禁止措置は一時的な短期間のものだと考えてきました。しかし現実は当初の予想とは違い、インドでの運用は現在まで行えておらず、この状況がいつまで続くのか分かりません。インド市場におけるチームの規模縮小を行わざる得ない状況です」と、当初はインド政府による一時的な措置であると楽観的な予測をしていた同社の困惑が伝わってきます。
とは言え、正式なインドからの撤退については明言を避けており、規模を縮小し今後も情勢を見守る構えであることが分かります。バイトダンス社にとって、インドは決して諦めることのできない巨大な市場であることをご存知でしょうか。TikTokは現在、世界中でのユーザー数が5億人おり、そのうちの1.2億人はインド人ユーザーなのです。そのため、バイトダンス社は2019年から現地法人を設立し2000人の現地社員を雇用してきました。バイトダンス社は、人口が多いインドを重要なマーケットとして認識し、10億ドル規模の投資を行うことを発表していました。その矢先に、中印間での国境線を巡る対立が激化し、突如中国製アプリの排除が発表されたのです。
 
すでにインド市場での成長を見込み多額の多額を行ってきたバイトダンス社。インド市場での排除が続けば経済損失は60億ドルに上ることが報じられています。中国政府は現在まで、インドに対する報復措置などは発表しておらず、どのような措置がインドに有効であるか見極めているのです。
 
中国とインドは共に10億人以上の人口を抱え、核兵器を持つ大国同士でさらに陸路でも繋がっています。中国にとってインドは、アメリカとの対立以上に慎重にならざる得ない国でもあるのです。今年は中印対立に世界の注目が集まることでしょう。