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中国政府が新疆ウイグル自治区に必死になる理由とは

先日、議会で香港人権法が可決されたアメリカ。トランプ大統領がこれに署名したことで、中国政府が強烈な不満を表明していました。そこへ昨日新たに、アメリカ下院本会議でウイグル人権法案が可決されたのです。新疆ウイグル自治区では、イスラム教徒に対する弾圧が行われているとされ、BBCなどの海外メディアは現地のウイグル人100万人が強制収用施設で思想改造などの再教育を受けていると報じていました。
 
 

ウイグル人強制収容所での再教育について報じるBBCニュース》
 
アメリカ議会は、こうしたイスラム教徒への人権侵害を巡り、中国政府当局者に制裁を科す法案を可決したのです。これに対し、在日中国大使館は本日公式Twitterで声明を発表し、「米下院が採決した所謂「ウイグル人権政策法案」は、新疆の現状を歪曲するものだ。中国が過激対策及びテロ対策における努力を中傷し、中国政府の新疆政策を攻撃している。また、国際法及び国際関係の基本ルールに著しく違反した行為であり、中国への内政干渉が著しい。中国は強烈な不満と、断固反対の意を表す」と、厳しい口調で今回のアメリカの法案可決を批判しました。
 
そもそも、ウイグルと中国はどのような歴史を経て、現在の状況となってしまったのでしょうか。もともとは今から約1700年前、中央ユーラシアで活動していたトルコ系遊牧民だったと言われるウイグル族。紀元700年代に国家を形成しますが、その後崩壊と分裂を繰り返し、1875年、現在の新疆ウイグル自治区を支配していたヤクブ・ベクが当時清朝だった中国に敗れ、新疆省として清朝支配下に置かれてしまいます。そして1955年、同地域は共産党政権下で新疆ウイグル自治区となったのです。
 
では、中国国内でウイグルの人々はどのように思われているのでしょうか。新疆ウイグル自治区は中国の中でも経済的に貧しい地域であったことから、一部中国人から、「犯罪者が多い」「貧乏な人たち」など、いわれなき偏見を持たれていることは間違いありません。また、2013年には新疆ウイグル自治区出身のウイグル族と見られる8名が、車を使い天安門付近で多数の通行人をひき殺す事件を起こしたことがあることから、中国人の中からウイグル族に厳しい目を向ける者が多いのです。
 
そんな世界中のメディアが報じるウイグル民族への弾圧ですが、その最大の目的は、「中国からの独立志向を抑える」というものです。新疆ウイグル自治区に住むウイグル族の中には、自分たちは中国人ではないと考える人が多く、中国からの独立を考える人も少なくありません。さらに、同自治区を中国から独立させようという「東トルキスタンイスラム運動」と呼ばれる組織も中国国内で活動しています。
 
中国政府が最も恐れているのは、この新疆ウイグル自治区で独立気運が高まることなのです。中国では新疆地域などが建国の過程で半ば無理矢理に中国へ組み込まれました。このため、中国政府を快く思っていないウイグル族は決して少数派ではありません。中国人であるというアイデンティティーがないウイグル民族にとって、彼らの悲願は中国から独立し自らの国家を建国するということなのです。
 
しかしご存知の通り、中国は56の民族によって形成される多民族国家ウイグル民族の独立志向に弱腰の対応をすれば、他の民族でも独立気運が高まってしまうかもしれません。そのため、中国政府はウイグル族の独立志向を抑え込めようと躍起になっているのです。香港問題に加え、ウイグル問題まで噴出し国際社会からの批判を集めている中国。一党独裁体制に暗雲が立ち込めてきているのかもしれません。