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上皇陛下と中国人教授の交流②

手紙での交流が続いていた上皇陛下と伍教授ですが、1988年に転機が訪れます。上皇陛下から伍教授に、「学者として日本を訪問し、直接会いませんか」と、打診があったのです。伍教授はこの時、非常に光栄なことだと感じ、ぜひ日本に行きたいと思ったのですが、当時大学から貰っていた給与では日本への渡航費をまかなえませんでした。困り果てていた伍教授に手を差し伸べたのも上皇陛下でした。海外の研究者に対して発給される奨学金制度などを伍教授に紹介したのです。

 

 

手紙での交流が始まってから10年後の1989年、伍教授は日本で行われた学会に参加し、上皇陛下との面会を果たします。当時、上皇陛下は天皇となったばかりで、非常に忙しい毎日を過ごされていましたが、限りある時間の合間を縫って赤坂御所にて伍教授と面会を実現されました。陛下は中国のハゼについて熱心に質問されたり、陛下自らハゼの標本室に伍教授を案内するなど、学者として伍教授との交流をさらに深めていきました。陛下はさらに、ハゼの研究の際に使用する染色用の染料や針など、中国では手に入らない研究道具を帰国した伍教授の元に送るなどしたと言います。伍教授は陛下から受け取ったこうした研究器具を使い、20年の歳月をかけ、中国で初となる中国ハゼの専門書を発表しました。中国のハゼ研究の進歩の裏のは、こうした上皇陛下の長きに渡るお力添えがあったのです。

 


陛下との2回目の面会は1995年に叶います。この年、伍教授は日本の文部科学省の学術振興会の招きを受け、日本を訪れていました。伍教授はこの時も陛下から研究室に招かれ、ハゼに関する研究内容はもちろん、昭和天皇が研究していた無脊椎海洋生物に関する研究内容などについて、丁寧な説明を受けました。伍教授は、この時の生物に対する陛下の熱心な研究姿勢から、陛下が学者であることを改めて認識したと語っています。

 


その後も陛下と伍教授は何度も面会を重ね、研究成果について議論を交わしました。最後の面会となったのは、2009年のことです。大学を定年退職したこの年、陛下と面会した伍教授は20年に渡る研究の集大成となる140万文字に及ぶ中国ハゼの専門書を陛下に手渡しました。伍教授はこの時の様子について、陛下のお力添えで書き上げることが出来たこの専門書は、日本と中国の両国における共同研究の成果であると語っています。

 


 

日中関係の友好的発展に大きな貢献をされてきた陛下は、中国のハゼ研究における発展にも多大な貢献をしてきたのです。