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台湾の歴史教科書問題

日本ではよくニュースで“歴史教科書問題”という言葉を耳にします。歴史教科書問題とは、教科書に書かれた近現代史の内容に対して、諸外国が訂正や修正を求めてくる問題のことを言います。日本はこれまで、南京事件竹島問題の記述を巡り、中国や韓国から訂正を求められたことがありました。


実はこの歴史教科書問題、台湾でも起きていることをご存知でしょうか。これについて、台湾内では意見が二分しているのですが、その台湾の教科書問題を語る上でまず知っておきたいのが、“外省人”と“内省人”という言葉です。

 

日本人に人気の旅行先であり、親日イメージの強い台湾ですが、その歴史は非常に複雑です。日本人から見ると、台湾に暮らす人々はみな同じ台湾人というイメージかと思いますが、実は台湾には“外省人”と“内省人”という括りがあります。

 

外省人とは第二次世界大戦後、中国大陸から渡ってきた国民党派の中国人のことを指し、内省人は戦前から台湾に暮らしていた原住民の人々です。実はかつて台湾では、外省人内省人が社会的にも政治的にも対立していました。昔から台湾に住んでいた内省人は、戦後突然台湾に渡ってきた中国系住民が我が物顔で台湾を統治し始めたことに対し、厳しい目を向けてきたのです。今はあまり耳にしなくなりましたが、以前は芸能界でも原住民系である内省人が多数を占め、外省人にはあまり活躍のチャンスがないという時代がありました。

 

台湾では政治政党も、中国大陸をルーツに持つ外省人たちの国民党と、台湾原住民をルーツに持つ内省人たちの民進党の2つに分かれています。なお、現在の台湾総統である蔡英文氏は、台湾原住民であるパイワン族をルーツとする内省人で、民進党員です。


こうした事情から台湾では、教科書にどう歴史を記すのか、という問題が現在に至るまでまとまらず、外省人内省人の間で紛糾が起きてしまうのです。自分たちのルーツである中国大陸の大陸文化や中国史に重きを置いた教育を行いたい外省人系の国民党に対し、原住民をルーツとする民進党は、台湾という島に根を下ろした歴史教育を展開していきたいと考えています。このため、台湾では政権が代わると、教科書の内容にも変わってくるのです。歴史認識の違いによる台湾人同士の争い。果たして解決する日はやってくるのでしょうか。