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中国の大企業でHIV感染者を不採用に

日本ではこのほど、エイズウイルスへの感染を申告していなかったことを理由に、30代の男性内定を取り消した北海道の病院に対し、札幌地裁が「差別を助長するものである」とその対応を批判する出来事がありました。実は中国でも同様の事例が発生しており、人権侵害の疑いがあるとして企業が批判の矢面にさらされています。
 
中国国内で高級酒造メーカーとして知られる茅台集団の子会社が採用試験に合格した30代の男性に対して無断でHIV検査を行い、陽性だったことを理由に内定を取り消したとして、男性側が慰謝料を求める裁判起こしたのです。
 
《今回の裁判が行われた裁判所》
 
メディアの報道によると、HIV患者だったこの男性は今年5月、同社の筆記試験と面接試験を受け見事合格。採用が内定していました。ところが今年6月、企業の担当者から「身体検査で異常が見つかったため、採用は見送ることになった」との連絡を受けます。健康診断で行ったHIV検査に引っかかったと言うのです。しかし、同社は合格者に対し、健康診断で体重・身長・視力・血圧などを行うことを明らかにしていたものの、HIV検査をすることは知らせていませんでした。つまり、勝手に男性の血液をHIV検査に回していたのです。
 
その後、企業は男性に対し、「HIVが蔓延するなど会社全体に悪影響を及ぼす可能性があった。他の従業員も恐怖に感じている」などと説明したといいます。男性は今回の企業の行為は法律に反するもので、人権や労働権を侵害していると主張、裁判を行うことを決意します。そして今月16日、地元裁判所は企業に対し「法に則り男性を採用すること。書面で謝罪を行うこと。慰謝料として9万元(約140万円)を支払うこと」を命じる判決を下しました。
 
日本でも中国でもHIVエイズに関する教育は随分前から行われているはずですが、残念ながら未だ医療機関や大企業でもこうした病気に関する偏見や差別は消えていません。日本でも、ハンセン病患者への差別や旧優生保護法の存在など、人権侵害が公然と行われてきた歴史があります。差別の連鎖を断ち切るためにも、我々は過去の出来事も含め、正しい知識を学び続けていかなければなりません。