周来友ブログ

周来友オフィシャルブログ

カルロス・ゴーン事件、中国メディアは日本の勝利と報じる

世界に衝撃を与えたカルロス・ゴーンの逃亡事件。中国でも事業展開を行う日産自動車社のCEOの逮捕と逃亡は中国メディアでも大きく報じられています。


f:id:zhoulaiyou:20200105193516j:image

 

中国メディア・観察者網は、カルロス・ゴーンレバノンへ逃亡した今回の事件について、「日本の勝利。関係当局は恥ずべきではない」と題した記事を掲載し、今回の事件を分析しています。

 

カルロス・ゴーンと言えば、ルノー・日産・三菱アライアンスの締結や、かつて倒産寸前まで追い込まれていた日産自動車の経営を再建したカリスマ経営者として世界中の自動車業界で知らない人はいない人物です。日産では、2.1万人の人員整理や5つの工場の閉鎖で大幅なコストカットを推し進める一方、研究開発費や技術者などの人件費は惜しみなく資金を投じ、わずか1年ほどで日産を黒字企業へと転換させました。

 

その手法はMBAなどでも紹介され、日産自動車の改革は神話化されたほどです。しかし、日産とルノーの関係が複雑なものになるにつれ、日本国内からはカルロス・ゴーンに対する不信感や不満の声が聞かれるようになりました。

 

1999年、経営破綻寸前だった日産はルノーの傘下に入り、当時ルノーのトップだったカルロス・ゴーン最高経営責任者として迎え、経営の立て直しを図ります。そして2006年、ルノーは日産の株式43%を取得し、事実上子会社化しました。この頃から日産内部で、経営が回復してきた子会社の日産が、経営不振に苦しむ親会社のルノー救っているという構図に不満を持つ人が増えてきます。持株比率において、ルノーが日産に優位な立場だったため、ルノーに対し議決権を持てなかったことも日産側の不満の原因でした。

 

2016年、日産は2373億円を投じ三菱自動車の34%の株式を購入。筆頭株主となります。これによって、カルロス・ゴーンは3社のアライアンスを成立させ、トヨタを超える売上高を実現させたのです。そして、3社アライアンスにおいても、業績不振のルノーが優位にあることに変わりはありません。このため、ルノー筆頭株主であるフランス政府は、日産を完全統合し、フランス企業にしてしまおうと考えるようになります。

 

フランス政府はこうした考えを幾度となくカルロス・ゴーンに伝えており、カルロス・ゴーンルノーと日産の正式な統合に向けた動きを加速させていました。その最中に特別背任罪の容疑で逮捕されたのです。

 

中国メディアは、カルロス・ゴーンの逃亡を許した日本の当局の責任問題は生じるが、今回の逮捕・逃亡事件でフランス政府が目論んでいたルノー・日産統合は阻止されたとし、事実上フランス政府と日本政府の戦いだった今回の事件は、全体を見れば日本の勝利だったと報じています。

 

大国を巻き込んだ今回の事件。今後は、カルロス・ゴーン被告の身柄引き渡しを巡り、レバノン・フランスVS日本という第2の戦いが始まることになりそうです。