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中国で抗日戦争ドラマが突然中止へ、その背景には?

日本でも中国でも観光業や飲食業など多岐に渡って経済的損失を拡大させている新型コロナウイルス。しかしその一方で、初期段階から日本政府や自治体が中国にマスクや医療用防護服を送り、支援を表明し、それに中国政府や中国国営メディアが公式に感謝の意を表明するなど、両国の政治的距離を縮めさせる効果も生み出しました。中国国内のSNSでも日本政府や日本人に対する感謝の言葉が投稿されており、日中関係に新たな変化が訪れていると言っても良いでしょう。


さらにこうした友好ブームを後押しするかのような現象も起こっています。中国山西省の公営テレビ局・山西テレビが、放送中だったテレビドラマシリーズ《紅高粱》の放映を急遽中止すると発表したのです。ドラマシリーズ・紅高粱は、抗日戦争をテーマにした内容ですが、こうした抗日戦争をテーマにしたドラマは中国のほどんどのテレビ局で今も頻繁に放映されています。

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《放送中止となった今回のドラマ》


今回、山西テレビが放映を取り止めた背景には、日本政府や自治体などが中国へ多くの支援物資を無償で提供し、友好ムードがかつてないほど高まっていることがあります。


日本政府は、新型コロナウイルスの発生により中国が深刻な医療物資不足に直面するや、すぐに医療用手袋104万枚,医療用防護服18万枚,手套105万副,マスク634万枚、さらに支援金約3000万元の提供を表明し、物資を送り届けてきました。地方自治体や民間からの支援も合わせれば、更に多くの物資が中国に届けられたのです。


山西テレビは、紅高粱の放映取り止めについてSNS上で、「紅高粱は20話の抗日戦争をテーマにした内容です。今回、日本の支援によって日中関係に友好的な雰囲気が流れていることから、一時的に今回のドラマの放映を取り止めることにしました」と、その理由を明らかにしました。


当然ながら背景には政治的戦略もあるでしょう。習近平政権はこの数年、米中貿易戦争によりアメリカとの関係が悪化すると、それに反比例するかのように、日本との経済的な繋がりを強化すべく、日本政府への接近を図ってきました。一方、日本政府も多額の金を日本に落としてくれる中国人観光客の増加を狙い、中国の要望に応え、関係改善を進めてきました。


さらに中国には、新型コロナウイルスが国際的な広がりを見せる中、4月に行われる予定の習近平主席の日本訪問をなんとしても実現させたいという思惑があります。国賓待遇で日本を訪問することで、内外に中国の影響力を誇示するとともに、新型コロナウイルス対策が功を奏したことをアピールしようと考えているのです。


日中両国が演出している友好ムードですが、新型コロナウイルスが収束し、米中関係が改善された時、その真価が問われることになるでしょう。