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中国の人質外交、世界からの孤立が顕著へ

8月31日、オーストラリア外務省はオーストラリア人女性がスパイ容疑で中国当局に逮捕されたことを公表しました。女性は中国系オーストラリア人で、中国国営放送・CCTVの国際番組でアナウンサーとして活躍していました。
 
逮捕されたのは、成蕾(チョン・レイ)という女性で中国国営放送の国際版CGTNに勤務していました。
 
オーストラリア外務省によると8月14日、中国当局からチョン氏をスパイ容疑で拘留したと連絡を受けたと伝えています。すでにCGTNの公式サイトからはチョン氏のプロフィールなどが削除されています。
 
チョン氏は1975年、中国湖南省出身で10歳の頃に家族と共にオーストラリアに移住しオーストラリア国籍を取得しています。その後、オーストラリアのクイーンズ大学を卒業後、アメリカ大手メディア・CNBCで記者として活躍後、2012年から中国国営メディア・CGTNでアナウンサーをしてきました。オーストラリア外務省は、すでに中国当局の監視の元、チョン氏とテレビ電話を行っており、状況の把握に努めていると説明していますが、中国当局はチョン氏をスパイ容疑で逮捕した件について、具体的な理由を明らかにしていません。今回の事件の背景には、中国政府とオーストラリア政府の間にある政治的対立が考えられます。
 
オーストラリア政府は、中国政府が行ってきた新型コロナウイルスの対応について不満を表明してきました。オーストラリア側は、中国での感染源や感染ルートを第三者機関によって調査するべきであると表明し、中国政府が強く反発してしました。また、オーストラリアは南シナ海で存在感を強める中国に対し、「中国の主張には法的根拠がない」と表明するなど、中国との関係が急激に悪化していたのです。
 
今回、突然オーストラリア人女性が中国で逮捕された理由は、オーストラリア政府に対する中国の報復措置である見方が有力であると考えられます。
 
こうした事件は、カナダとの間でも発生しています。現在、カナダで拘留され裁判が行われている華為技術(ファーウェイ、Huawei)の孟晩舟について、中国政府はカナダ政府に強く釈放を求めてきました。しかし、カナダ政府が身柄の引き渡しを拒否すると、中国は中国に滞在していたカナダ人3名を違法薬物の密輸などの容疑で逮捕し、異例のスピードで裁判を行い死刑判決を下しています。
 
中国のこうした外交政策は、海外から人質外交とも揶揄されるなど中国に対する見方は今後ますます厳しいものになっていくことでしょう。国際的な孤立が顕著になっている中国。隣国である日本の立ち回りが今後世界情勢に大きな影響を与えることになるでしょう。