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中国内モンゴルで言語使用制限の動き、抵抗するモンゴル族

多民族国家である中国には56の民族が共生し、中国国内で使用される言語は約30にも上ります。戦後、中国政府は“普通語”と呼ばれる標準語(中国東北部の方言)を中国の公用語と定め、普通語の使用を国民に推奨してきました。
 
義務教育や大学など教育の場においても、学校内には「普通語を使用しましょう」というスローガンが掲げられ、授業中の言語はもちろん、校内での会話も普通語で行うよう教育当局は指導を行なってきたのです。

 
しかし、多くの民族が共生している中国では国内外から言語の単一化によって、民族の伝統である方言言語などが消滅するのではないかという危機感も指摘されてきたのです。
 
こうした中、モンゴル族が暮らす内モンゴル自治区では異変が起こっています。内モンゴル自治区教育当局は、自治区内の小学校と中学校に対し、新たな教育指針を発表しました。当局は、新学期が9月1日から始まることに合わせ、学校内の授業を全て普通語で実施するよう通達を発表したのです。
 
これまで内モンゴル自治区の小中学校では、主にモンゴル語を使用した授業が行われてきましたが、教育当局は教科書なども全て普通語のものに変え、全ての科目を普通語で行い授業中の質疑なども普通語を使用しなくてはならなくなりました。当局の突然の発表に、内モンゴル自治区モンゴル族の市民が多く登録している交流サイト「Bainu」では、地元政府に対し、抗議の書き込みが多く寄せられていました。そうした中、このサイトは今月23日、突然封鎖されてしまいアクセスが出来なくなってしまったのです。
 
地元住民たちは、モンゴル族の誇りであるモンゴル語を軽視する当局の方針に激しく抵抗しており、9月1日に大規模デモも計画されるなど、今後モンゴル族住民と治安当局の間で衝突が発生する可能性が高まるなど緊張が走っています。
 
中国政府にとって、中国全国で普通語教育の向上を図ることで、識字率を高め、貧困層が多い少数民族の人々にも社会で活躍できる機会を増やそうとする狙いがあります。また、愛国心を高めるためにも、言語教育は大きな役割を果たすのかもしれません。
 
しかし、事実上の同化政策とも言える言語使用の制限は、今後海外諸国からウイグル問題同様に人権侵害との指摘も受けることになり、中国の国際的な孤立はさらに深まることにもなるのではないでしょうか。
 
民族の誇りであるはずの言語や宗教など文化の消滅が進む中国。こうした文化こそが国家にとってかけがえの無い財産であるはずなのですが……。