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激しさを増す米中対立、中国政府がトランプ大統領より恐れる男とは?

トランプ政権による対中強硬策は、確実に中国の政治・経済に大きな影響を与えています。これまでアメリカ政府に強気の発言が目立っていた中国ですが、ここ最近は対話を呼び掛ける場面も多く見られるようになりました。こうした中国の戦略の変化からも、中国がアメリカの対中戦略にかなり苦しめられていることが分かるでしょう。
 
そんな巧妙な封じ込め政策の裏には、中国を知り尽くした中国系アメリカ人学者の存在があったことをご存知でしょうか。余茂春(マイルズ・ユ)という名のその学者は、現在アメリ海軍兵学校で教授を務め、アメリカ国務院で対中政策の首席顧問を務める人物です。では、ユ氏はなぜ米国で対中政策の首席顧問となったのでしょうか。また、中国国内で同氏はどのように評価されているのでしょうか。
 


 
1962年、中国安徽省で生まれ、学生時代の多くを重慶市で過ごしたユ氏は非常に優秀で、名門・中国南開大学に進学し、唯物弁証論などを専攻。卒業後の1985年には米国に渡り、米・スワースモア大学で修士課程を修了しました。その後1989年に中国で天安門事件が発生すると、当時の学生リーダーや関係者のアメリカ亡命を手助けするなど、この頃から中国の民主活動にも積極的に関わるようになっていきます。そして米国で博士課程修了後、対中政策の専門家として国防省や国務院で活躍するようになるのです。
 
こうして米国では対中政策の専門家としての手腕を発揮していきますが、その一方で中国国内では「売国奴」としてメディアやSNSで厳しく非難されることになってしまいます。ユ氏の生まれ故郷である安徽省では、「売国奴・余茂春への怒りの声明」と題したイベントが開催され、中国人であったユ氏がアメリカで反中行為を行っているとして、安徽省出身の偉人リストから名前を削除する動きも見られています。また、重慶市にあるユ氏の母校では、歴代の成績優秀者の名前が石碑に刻まれているのですが、ここからもユ氏の名前が削られてしまいました。
 
《ここにある余氏の名前は現在すでに削られ削除されている》
 
さらに今月4日には中国国営メディア・環球時報が「中国の恥辱の歴史の柱に余茂春を縛りつけ、どのような気持ちになるかを体験させるべきである」となんとも過激な批判記事を掲載しました。逆に言えば、中国を知り尽くすユ氏の存在は中国政府にとってそれほど恐ろしい存在ということなのかもしれません。