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家庭と学校の距離感とは

日本で子育てをしていると大変なのが、学校との関わり方ではないでしょうか?特にPTAは、共働き世帯が増加する今の時代、役員が中々決まらない、というということも珍しくありません。実は中国でも、学校との関係性について悩みを抱える世帯が非常に多く、ついに国営メディアが取り上げられる事態にまでになっているのです。
 
中国の小学校や中学校では一般的に、クラスごとに担任教師と保護者がグループチャットで繋がっています。グループチャット上では、担任教師から保護者らに宿題の有無や学校行事の情報が共有されるほか、時には保護者から教師に、指導方法の改善要望などが出されることもあります。
 
《保護者と担任教師のグループチャットの例、昼夜問わず保護者たちと教師はメッセージを送り合っている》
 
しかし、常に担任教師と保護者がグループチャットで繋がっていることで、様々なトラブルに発展することも少なくありません。そのため、今中国のネット上では“我就退出家长群怎么了”という言葉が大流行しているのです。この言葉は学校との関係に疲れた保護者から発せられたもので、日本語に翻訳すると、「学校のグループチャットから退出するけど何か?」となります。一体、中国の学校で何が起きているのでしょうか。
 
《グループチャットを退会する決意を動画サイトに投稿した保護者》

この言葉が流行したきっかけは、江蘇省に暮らす保護者の動画でした。学校側から毎日のようにグループチャットで子供の宿題を添削するよう求められていたある男性保護者が、あまりに負担が大きいと、苦衷を訴える動画を投稿しました。
 
そして男性の動画投稿がSNSなどで広がっていくと、各地の保護者たちから次々と賛同する意見が寄せられたのです。
 
ネット上では教師から送られたメッセージを公開する保護者もおり、そこには「あなたは子供の宿題の添削も出来ないのですか?子供は句読点も間違えているし、あなたが親としての責任を果たしているとは思えません。宿題も家庭で見れないで、全て教師に押し付ける気ですか?」など、辛辣な言葉が多数見受けられました。
 
こうした事態を受け、とうとう行政も動き出します。山西省太原市教育委員会は10月26日、通達を発布し、学校側が保護者に対し、子供の宿題の添削を行うよう要求することを禁止したのです。
 
また、中国の小中学校では学校が保護者たちに教室や校内の清掃を手伝わせるということも状態化していました。校内清掃に参加出来ない保護者を学校が呼び出し面談を行うということすら起きていました。
 
太原市教育委員会は、こうした学校行事への強制参加についても全面的に禁止することを発表しています。いずれも、各家庭における負担があまりにも大きいことが考慮されたのです。今後、太原市教育委員会の動きは全国の教育機関にも広がっていくでしょう。
 
一方、保護者から教師に対するプレッシャーも深刻な問題となっています。過度な学習成績向上を期待する保護者から昼夜を問わず繰り出される要求や苦情にストレスを溜める教師が増え、教師の離職率や自殺が上昇しているのです。
 
家庭と学校の距離が近すぎることで、互いに依存し過ぎ、共倒れしてしてしまっていると言えるでしょう。家庭と学校はどのような距離感を保つべきなのか。これは行政だけでなく、学校と関わる国民一人一人が考えなければいけない問題なのかもしれません。