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中国の“離婚冷却期間法”が施行直前に例外を追加へ

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、行政に寄せられるドメスティック・バイオレンス(DV)の相談件数が急増しているようです。新型コロナウイルスが仕事面やプライベートにもたらすストレスから、感情のコントロールが出来なくなり、配偶者の心身に暴力を振るう人が多くなっているのでしょう。
 
こうしたDVへの対策が世界的な課題となる中、中国で大きな変化がありました。来年1月1日から、中国の民法に婚姻に関する新たな法律が加えられ、「夫婦が離婚届を提出後、30日以内にどちらかが行政に異議を申し立てれば、離婚届の受理を取り消すことが出来る」ことになったのです。
 
中国がこうした法律を施行する背景には、女性の社会進出や高学歴化によって、男性に頼らず自立した生活を送る女性が増え、離婚率が上昇していることが挙げられます。一方、離婚率の上昇に反比例するように子供の出生率は下がり続け、高齢者の割合が急増、今後財政難が深刻化するリスクが高まっています。このため政府は出生率を少しでも改善させようと、離婚を求める夫婦に“冷却期間”を設け、離婚率を引き下げようとしているのです。
 
その一方で、国民からは厳しい声も寄せられていました。DVに苦しんでいる配偶者にとって、この法律はDVから逃げ出すことを妨げる可能性があるからです。配偶者からの暴力から逃げるため、ようやく離婚にたどり着いたとしても、相手が30日以内に取り消しを申し出れば離婚が取り消されることになるためです。
 
こうした声が高まったため、中国政府は法施行を直前に控えた今月4日、例外を設け「配偶者からのDVがある場合、この法律は適用しない」と発表したのです。中国では先日、夫からのDV被害に苦しんでいた女性が夫から全身にガソリンをかけられた上、火をつけられ、焼死するという衝撃的な事件が起こったばかりでした。
 
 
 
中国政府によると国内の2.7億世帯中、約30%の世帯でDV行為が行われており、その被害者の多くが女性であるといいます。中国では2016年から、DV行為を禁止する「反家庭暴力法(反DV法)」が施行されていますが、厳しい罰則はないに等しく、形骸化しています。国内の人口問題を解決するためにも、今後政府は抜本的な改革を迫られることになるでしょう。