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過労死の撲滅に向け、中国深セン市が強制休暇制度を導入か

海外の日本に対する印象として、これまでよく言われてきたのが「日本人は勤勉」です。このように日本人の仕事に対する真面目な姿勢は海外でも高く評価されてきました。その一方で問題視されてきたのが、その勤勉さゆえの働き過ぎです。過労死なども頻繁に発生し、日本政府は働きかた改革を提唱、労働環境の改善を図ってきました。

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こうした社会的事情もあり、日本では聞き慣れた過労死ですが、実は中国でも近年、過労により死亡するケースが増加し、社会問題化しているのをご存知でしょうか。中国では、大企業などで「朝9時から夜9時まで週6日間働く」ことが常態化し、「996問題」という言葉まで誕生したほどです。


そんな中、深セン市では過労死防止のため、労働者に強制的に休暇を取らせる“強制休暇制度”の導入が議論されています。


深セン市衛生健康委員会は今月、市民に向け「強制休暇制度導入」について意見を求める通達を公布しました。委員会は今回の制度導入の目的について「労働の中で受ける極度のダメージから労働者の身心を守るため」であるとし、「企業は必ず従業員に休暇を与えなければならない」との見解を示しました。

 

中国政府は2016年、国民の健康向上を目的とする『健康中国2030』という計画を発表しました。中国では職業や生活が多様化する中、生活習慣病や過労死などが増加、国民の健康状態が大きく変化しています。


そうした国民の健康状態の悪化を食い止めるべく、2030年までに関連法規の整備などを進めようと導入されたのが『健康中国2030計画』です。そして、今回深セン市で公布された強制休暇制度も、この『健康中国2030計画』を前提に出されたものなのです。

 

一方、今回の制度導入には懸念の声も寄せられています。当局による強制休暇の導入によって、企業からサービス残業を強要されたり、自宅での仕事を命じられるような事態になる可能性があるのです。強制休暇制度が導入するに当たっては、管理当局がどのように労働者の労働環境を把握するのか、企業の監督をどのように行うかなど、解決すべき問題も少なくありません。

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まだまだ議論の余地はある「強制休暇制度導入」。ただ、過労死を防止しようと行政が動き出したこと自体は評価できるのではないでしょうか。