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中国の公衆トイレで顔認証システムが導入、市民からは懸念の声

すでに顔認証システムは私たちの生活には欠かせないテクノロジーとなっています。スマートフォンのロック解除はもちろん、企業では従業員の入退管理の他、ホテルでは客室や館内施設への入室に顔認証システムが利用されています。実は中国では日本以上に顔認証システムが至る所で利用されています。中でも特に意外な場所での活用と言えば、公衆トイレではないでしょうか。
 
中国広東省東莞市内にある公衆トイレでは、顔認証システムを利用した取り組みが行われています。この公衆トイレでは、入口に顔認証システムを搭載したトイレットペーパーの取り出し箱が設置されているのです。トイレの利用者は、トイレペーパーの取り出し箱に前に立ち、3秒ほど経過すると自動的に一回分の使用分に相当する60㎝から100㎝の長さのトイレットペーパーが出てくるというものです。一体なぜこうした技術をわざわざトイレに設置しているのでしょうか。



実は中国では、公衆トイレからトイレットペーパーが盗難されてしまうということが珍しくなく、これまでそうした被害を防ぐため、敢えてトイレットペーパーを設置しない公衆トイレが多くあったのです。今回、顔認証システムを利用した公衆トイレが誕生した背景にはこうした理由があったのです。そしてもう一つ、導入に至った背景があります。それは顔認証情報の収集です。
 
今回、トイレットペーパーの利用に顔認証システムを搭載した技術を開発した“天津首聯科技有限公司”は、メディアの取材に対して「今回開発したこのトイレットペーパーの取り出しに搭載している顔認証技術については、中国公安部の電子産品検査センターの認証を受けたものである」と、中国当局に利用者の顔認証情報を提供していることを暗に認める発言を行っているのです。
 
こうしたことから中国国内のネット上では、個人情報の管理を巡って多くの市民から不満のコメントが相次いで寄せられているのです。企業側は一定の時間が経過すると顔認証情報は自動的に削除されるとしていますが、不安の声を寄せるネットユーザーが後を絶たないです。
《顔認証システムの他に、SNSアプリと連動したトイレットペーパー取り出しボックスもすで導入されている》

こうした市民の声が反映されたのか、今月6日、東莞市当局は顔認証システムを利用したトイレットペーパーの取り出し設備の利用を停止することを発表し、今後は個室にそれぞれトイレットペーパーを設置していくことを説明しています。
 
市民に対し便利なテクノロジー技術を提供する一方、市民の顔情報を収集し国内の治安維持に活かしたい狙いがあると見られる中国当局。こうした便利な技術を無条件に喜んで受け入れる前に、やはり1人1人がそのリスクを理解するべきなのでしょう。